パソコン操作習得の早道は「覚える」のではなく「考える」

BerckenGroep / Pixabay

高齢者にパソコンを教えるのは大変でしょう、とよく言われます。親に教えるだけでも大変なのにとも言われます。高齢者にパソコン操作を教えるのが大変だと対象者を限定して考えたことが一度もなく、この問いに対して未だに明確な回答ができないのですが、高齢者にパソコン操作を教えているインストラクターとして考えていることを書いてみようと思います。

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パソコン操作に対する苦手意識を理解する

パソコン操作に長けている人やIT技術に対する知識のある人からすれば、なんでこうも理解できないのかと思うかもしれませんが、高齢者と呼ばれる世代の人からすれば、長い人生の中で無かったものが突然現れたような感覚なのではないでしょうか。

便利だという声を聞いて興味関心が高まったとしても、いざやってみようと思うかどうかは大きく二分するのではないでしょうか。

あのよくわからないカタカナの言葉、クリックって何?文字を入力するって?という何もかもが初めての経験。それは臆病にもなるだろうし、苦手意識を持ってもしまうでしょう。

これは世代に関係なく、新しいことに対する不安や期待が入り混じるような感覚、誰にでもあるのではないでしょうか。

わたし自身が独学でパソコンを操作できるようになったからでしょうか。その気持ちがよく分かるのです。周りにパソコンを持つ人がほとんどいない状況、パソコン操作を習うにも教室がないような地方に住んでいるわたしにとって、パソコンは未知すぎるくらい未知でした。

電源ひとつ入れるのもドキドキしていた時代。文字入力をするにもまずはローマ字変換から覚えなくてはいけない。インターネットという名前ではなくパソコン通信と呼ばれていた時代に、通信会社の人に電話で教えてもらいながらパソコンと電話線をつないだあの日があったから、今の自分がいます。

ドキドキしっぱなしでした。本屋さんにもパソコンの本がほとんど並んでいない中で少しでも理解できそうな本を買い、本とモニターとキーボード、目が回るような感覚で操作し、それが積み重なって今の自分がいます。

すべての機能を覚えているかというと覚えていることは少ないです。どちらかというと思いだすに近い。記憶の中に点のようにあるものを自分が導き出したい結果にたどり着くために今まで経験したものを思い出して操作しているにすぎません。

だからでしょうか。高齢者がパソコンに向き合うときの不安や期待がよく分かるのです。わたし自身がそうだったから。ちなみに、わたしがパソコンに触れたのは29歳のときでした。それでもあれだけのドキドキ感、不安があったのですから、その倍の時間生きている高齢者の方からすればもっともっとドキドキや不安があっても当たり前だと思える。だって、人生のほとんどの時間、ITやパソコンが暮らしの中に無かったのですから、不安を感じても当たり前ではないかと思えるのかもしれません。

さらに言えば、ITやパソコンが無くても暮らしに困ることは無いのです。どんなことができて、どんなことが便利なのか、今まで無かったものだからその便利さや楽しさを知らないのです。知るきっかけすらなかったのかもしれない。そう考えれば、未知のものに対する苦手意識があっても仕方がないとわたしは思ってしまうのです。

問題なのか、課題なのか。

高齢者にパソコンを教えるのが難しいという人はどんな場面で教えていらっしゃるのでしょうか。

聞かれたことに答えるのは問題を解決することが優先

インターネットに繋がらなくなったという場面を想定して書いていきます。

この場面では高齢者が「インターネットに繋がらない」という問題を抱えています。わたしはまずこの問題を解決します。解決しながらなぜそうなったのかという原因が分かればそれを話します。このとき、操作手順を話しません。あくまでも優先すべきは問題解決です。たぶん、相手はこういうでしょう。「操作が早すぎて覚えられない」と。

そこで、こう問います。「では、手順をメモしておきますか?」と。この手順は覚える必要がないのです。手順をメモしておき、どこかに失くしてしまわないように残しておけばいいのです。困ったらこのメモを見てねと付け加えて。

○○がしたいのは課題。これが教える

年賀状の宛名印刷をしたいという場面を想定して書きます。

この時はまず、自分が操作していくのをメモしながら見てもらいます。それから元に戻し、メモした内容を見ながら相手に操作してもらいます。わたしはその操作を見ながら「合ってますよ」「大丈夫です」と相槌を打つだけです。

手順を間違えそうになっても黙っています。きっと失敗しますよね。失敗するまで黙っています。うまくいかなった原因はこの時点で分かっています。メモが足りないなと分かっていても黙っています。うまくいくかいかないか、結果が出るまで黙って待ちます。

どちらにしても結果が出てから。なぜうまくいかなかったのか、もう1回元に戻してもらって最初からやってもらいます。途中からやり直すは記憶が繋がらなくなるので、わたしは最初に戻してもらってやってもらうようにしています。

○○がしたいと操作しているときにいろいろ話しかけるのは気が散ります。間違っていないかを気にし過ぎてしまいます。だから黙っています。

もしうまくいかなかったとしても、何度か元に戻していると途中で必ず気が付かれます。そうするとメモが増えます。もう一度やってみるとうまくできます。

うまく操作できたという達成感が必要なのです。そして、うまくいかなかったとしても何度かやっているうちにできたという結果が必要です。

それは操作手順を覚えたとは違いますが、うまくできたという記憶になります。一度うまくできたという記憶があれば、うまくできた理由を思い出してくれます。自分で書いたメモがあることも思い出してくれます。

メモを見ながらでもできるようになれば、それは自信に繋がります。メモを見ながらでもできるのは覚えたというのとは違うかもしれないけれど、誰にも聞かずに結果を出すことができているのです。わたしはそれでいいと思っています。

パソコン操作は覚えるものでなくていい。もう一回やろうと思えるならそれでいい。

パソコンに対する苦手意識がある人は、大きな不安を抱えています。もし間違ったらどうしたらいいのだろう、パソコンを壊してしまったらどうしよう。その反対側で「人に聞かなくてもパソコンを操作できるようになりたい」とも思っています。

誰にだって人の手を煩わせずにことを成したい、そう思う気持ちがあります。わたしはその気持ちが比較的強いほうなので、それを理解することができます。

ましてや、パソコンやITというものが無くても暮らしには困らないのですから、覚えるのも習うのも辞めることだってできます。だけど、長い人でもう8年目になる人が今でもパソコン教室に通ってくれる理由。

「できんと嫌やなと思うし、先生にも悪いと思うから辞めようかなと思うけど、もう一回やってみようって先生が言ってくれるからもう1回やるとできる。できたらめちゃくちゃ嬉しい」

「ここでなんかあってもわたしがおる。いつもそう言ってくれる。だからもう1回って思うとできる」

「先生はケチやから答え教えてくれんし、いつも自分で考えてって言う。そんなこと言われたって分からへんわと思うけど、考えろって言われるから考えると思い出すんや。どこにメモしたか。メモ見ながらやったらできるんや」

そう言ってくれる皆さんが口をそろえてこう言います。「パソコンは覚えられへんけど、考えたら思い出せる」と。

そう、覚えるのではなくてもう1回やってみようと思えるかどうか。もう1回やろうと思えれば必然的に考えることができる。

年齢が高くなれば覚えることが難しくなるという人がいます。もちろんわたしも皆さんと一緒に年を重ねていっています。覚える力は29歳のころに比べたらぐんと落ちている自覚があります。だけど、考える力は鍛えることができると思います。なぜこうなってしまったのかと考える力です。どうしたらできるのかと考える力です。

パソコン操作は手順を覚えるのではなくて、どうやったらできるのかと考える力のほうが必要で、もう1回やってみようと怖がらずに挑戦してもらうのが操作がスムーズに進む一番の早道だとわたしは思います。

パソコン教室の先生
パソコン教室の先生

市内の60歳以上の方を対象としたパソコン教室でインストラクターをしています。授業の中でお話している内容やパソコン相談会でお受けするご相談などについて書いています。

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